2025/06/17 11:25
“香りで酔う”という新しい体験——インフューズドコーヒーの世界
近年、コーヒー業界で注目を集めている「インフューズドコーヒー(Infused Coffee)」をご存知だろうか。これは、コーヒー生豆をバーボンウイスキーやラム酒、ワインの樽や液体に一定期間漬け込むことで、香りや風味を移し、その後焙煎するという新しい加工手法である。焙煎時にアルコールは揮発するためノンアルコールでありながら、香りには驚くほど豊かな洋酒のニュアンスが残るのが特徴だ。
世界のスペシャルティコーヒーシーンでは、インフューズドの技術を芸術的に追求する動きが加速している。中南米の一部農園では、フルーツやスパイスなど自然素材を用いた発酵プロセスと組み合わせることで、より複雑で個性的なコーヒーを生み出している。世界バリスタチャンピオンシップ(WBC)などの舞台でも、インフューズドコーヒーを使用したプレゼンテーションが登場し、注目を集めている。
一方で、コーヒーショップにおいてはこの革新的なスタイルに対して意見が分かれる。伝統を重んじる店舗では「コーヒー本来の味を損なう」と否定的な見解もあるが、一方で“香りの演出”として積極的に導入し、夜のデカフェメニューや、スイーツペアリングに活かす店舗も増えている。
アルコールを使わずに“香りで酔える”このコーヒー。未来の一杯として、私たちのライフスタイルに新たな選択肢をもたらしてくれる存在になりそうだ。